市販の培養土でスイカは美味しく育つ?元肥の過剰を防いでツルボケさせないための土作りの基本

手に持った甘くて大きなスイカと、元肥過多を防いで美味しく育てるための土作り 栽培

夏の風物詩であるスイカを家庭菜園で育ててみたいとお考えの方は多いでしょう。
しかし、あの甘くてみずみずしい果実を自分の手で収穫するのは、意外と難易度が高いのです。

特に初心者の方が陥りやすい失敗が、味が薄い、あるいは水っぽいスイカになってしまう「ツルボケ」という現象です。
この原因の多くは、土作りの段階で元肥を過剰に与えすぎてしまうことにあります。

市販の培養土は便利ですが、すでに肥料が配合されているため、そのまま使うとスイカにとっては栄養過多になりがちです。
スイカは実は少し痩せた土の方が、甘みを増して美味しく育つという特性を持っています。

そこで今回は、市販の培養土を活用しながらも、元肥の過剰を防ぎ、ツルボケを回避するための賢い土作りの基本について解説します。

  • なぜ市販の培養土がそのままではリスクなのか
  • 元肥の与えすぎを防ぐ具体的なブレンド方法
  • ツルボケを防ぎ、甘いスイカを収穫するための土作りのポイント

これらの要点を押さえれば、ご自宅のベランダや畳一つ分のスペースでも、十分に満足のいく極上の一玉を育てることが可能です。
失敗しない土作りのコツを一緒に見ていきましょう。

スイカ栽培の魅力と美味しく育てるための土作りの重要性

畑に植えられた元気なスイカの苗と肥沃な土

真夏の太陽の下、冷やした丸ごとのスイカをナイフで割った瞬間のあの瑞々しい音と甘い香り。
家庭菜園でスイカを育てる最大の魅力は、市販品にはない完璧な食べ頃を見極めて収穫できる点にあります。

しかし、この至福の一滴を味わうためには、いくつか乗り越えるべき壁が存在します。
スイカは農学的見地から見ても、野菜の中でも特に繊細で栽培難易度が高い部類に入るからです。

スイカ栽培において最も重要かつ、後から修正が効かないのが「土作り」のプロセスです。
植物の生育において土壌はまさに「基礎の土台」であり、栄養素の供給源であると同時に、根の環境を整える役割を担います。

美味しいスイカを育てるためには、土壌の保水性、排水性、そして適切な通気性の三要素が高度なバランスで保たれている必要があります。
このバランスが崩れると、根の呼吸が阻害されたり、必要な栄養が吸収できなくなったりして、最終的な果実の品質に直結します。

特に初心者の方が陥りやすい失敗が「元肥の与えすぎ」です。
スイカは肥料や水をたっぷり与えれば美味しく育つと考えがちですが、これは大きな誤解です。
元肥が過剰になると、ツルばかりが茂って実がつきにくい「ツルボケ」という現象を引き起こします。

ツルボケを起こした株からは、糖度が低く水分ばかりの淡泊なスイカが収穫されてしまいます。
これを防ぐためには、最初から肥料を控えめに設定し、スイカの生育段階に合わせて必要な栄養を補給していく高度な管理が求められるのです。

つまり、美味しいスイカを収穫するための第一歩は、スイカの生育特性を理解し、土壌環境を適切にコントロールする土作りにあります。
焦らず着実に土の状態を整えることが、甘い実を結ぶ最大の近道となるのです。

スイカの生育特性と味を左右する土壌環境の関係

スイカの根が張る広い土壌環境の断面イメージ

スイカを美味しく育てるためには、まずこの植物が持つ特有の生育特性を深く理解しなければなりません。
農学的な視点から見ると、スイカの根の張り方や、水分・養分の吸収メカニズムは他の野菜とは大きく異なります。

この特性を無視して一般的な野菜と同じように土作りをしてしまうと、思わぬ失敗に繋がるのです。
ここでは、土壌環境がスイカの味にどのように影響を与えるのか、その密接な関係を紐解いていきましょう。

スイカの根はどう育つのか

スイカの根は、大きく分けて「主根」と「側根」、そしてそこから無数に分岐する「細根」で構成されています。
主根は地中へと深く伸び、側根は表土に近い部分を水平に広がっていきます。
この根の構造こそが、土作りにおいて考慮すべき最大のポイントとなるのです。

一般にスイカの根は深く伸びると考えられがちですが、実際には地表から30cm程度の範囲に根の大部分が密集して分布する傾向があります。
そのため、深い土壌全般の改良よりも、表土層の物理的・化学的性質を入念に整えることが求められます。

さらに注意すべきは、スイカの根が酸素を非常に多く必要とするという点です。
土壌が硬く締まっていると根の呼吸が阻害され、生育が著しく低下します。
したがって、深耕と同時に通気性を確保するための土作りが不可欠となります。

また、スイカの根は乾燥には比較的強いものの、過湿には非常に弱い性質を持っています。
根が酸素不足に陥ると生育が止まるだけでなく、深刻な病害の引き金にもなります。
水はけの良さもまた、土作りの重要な要素です。

味を決定づける土壌水分と肥料のバランス

スイカの味、とりわけ糖度を決定づける最も重要な要因は、生育後半における「土壌水分」と「肥料成分」の絶妙なバランスです。
特に、窒素成分の過剰は、スイカの味を著しく損なう原因となります。

窒素が多すぎると、スイカは葉やツルを茂らせる「栄養生長」にエネルギーを注ぎすぎてしまいます。
その結果、実そのものに糖分を蓄積させる「生殖生長」が後回しにされ、水っぽく甘みの薄いスイカになってしまうのです。
これが、元肥過剰が引き起こす典型的な失敗例です。

逆に、土壌の水分が多すぎる環境では、根系が吸水を過剰に行い、果実内の糖度が薄められてしまいます。
したがって、収穫前の一定期間は意図的に土壌を乾燥気味に保つ「控水」という高度な技術が必要となります。

美味しいスイカを育てるための土作りとは、単に栄養をたっぷり含んだ土を作ることではありません。
むしろ、スイカがストレスを感じない適度な環境を保ちつつ、生育の後半であえて「適切なストレス」を与えられるようなバランスの取れた土を作ることに他なりません。

  • 根の酸素需要に応えるための高い通気性
  • 過湿を防ぐための迅速な排水能力
  • 窒素過多を避け、生育後半の控水を可能にする土壌構造

これらを満たす土壌環境を構築することが、極上の甘みを持つスイカを収穫するための絶対条件となります。

市販の培養土を使うメリットとスイカ栽培での落とし穴

袋に入った市販の培養土とスコップ

家庭菜園を始める際、多くの方が真っ先に手にするのが市販の培養土でしょう。
メーカーが配合を計算して作り上げているため、品質が均一で、手軽に利用できる点は大きなメリットです。
しかし、スイカ栽培においては、その手軽さがかえって毒になることがあります。

スイカは、他の一般的な野菜とは異なり、土壌の栄養状態に対して極めてシビアな反応を示す植物です。
特に、スイカの味を左右する糖度や果汁の質は、土作りの段階で決定的に影響を受けます。
安易に市販の培養土へ頼り切るアプローチには、見えない落とし穴が潜んでいるのです。

市販の培養土に含まれる元肥の罠

市販の培養土のパッケージを確認すると、大抵の場合「元肥入り」という表記が目に留まります。
これは、土を開封してすぐに植え付けができるという手軽さをアピールするための機能ですが、スイカを育てる際にはこの元肥が大きな罠となります。

培養土に最初から含まれている元肥は、速効性の肥料と遅効性の肥料がバランス良く配合されています。
また、培養土の主体となるピートモスやココナッツチップなどは保肥性が高く、一度吸着された肥料成分は簡単には流出しません。
そのため、スイカの生育後半になっても過剰な窒素成分が土壌に残り続けることになります。

この状態でスイカを育てると、植え付け直後は順調に生育しているように見えても、実が膨らみ始める頃に問題が顕在化します。
土壌中に窒素が残りすぎていると、スイカの株は実に栄養を送るよりも、葉やツルを伸ばすことを優先してしまいます。
これが、スイカ栽培において最も忌避すべき「ツルボケ」の状態です。

ツルボケを起こした株からは、糖度が低く水分ばかりの淡白なスイカしか収穫できません。
スイカ本来の濃厚な甘みを引き出すためには、収穫前にあえて水と肥料を控え、株に適度なストレスを与える必要があります。
しかし、保肥性の高い培養土を使ってしまうと、この意図的なコントロールが非常に困難になります。

したがって、市販の培養土をそのまま使うことは避けるべきです。
スイカ栽培においては、元肥の量を意図的に減らし、追肥によって細かく栄養を管理する体制を整えることが不可欠です。

市販の培養土を使う際の主なリスクは以下の通りです。

  • あらかじめ配合された元肥の量がスイカに対しては過剰になりがちである
  • 保肥性の高い土壌素材により、生育後半の窒素制御が困難になる
  • 結果としてツルボケを引き起こし、糖度の低いスイカになる原因となる

手軽さを捨てて、スイカの生理に合わせた土作りに着手することが、美味しい一玉をものにするための第一歩となります。

ツルボケとは何か?スイカの味を損なう原因

過繁茂したスイカのツルと萎んだ葉

スイカ栽培において、最も避けたい失敗の一つが「ツルボケ」です。
この現象は、字のごとくツルが暴れてしまい、本来向けられるべきエネルギーが実に届かない状態を指します。
農学的には「栄養生長」と「生殖生長」のバランス崩壊と言えるでしょう。

スイカの栽培プロセスにおいて、葉やツルを伸ばす成長段階を「栄養生長」と呼びます。
一方、花を咲かせ実を肥大させる成長段階が「生殖生長」です。
本来ならば、ある程度ツルを展開した後は、栄養生長から生殖生長へとスムーズに移行し、実の肥大と糖の蓄積が進まなければなりません。

しかし、土壌中の窒素分が多すぎるなどの理由で栄養が過剰になると、株はいつまでも葉やツルを伸ばそうとするモードから抜け出せなくなります。
このツルボケ状態では、実に送られるべき糖分や養分が葉やツルの成長に奪われてしまうのです。

結果として、果実の肥大が遅れる、糖度が上がらない、果肉が水っぽくなる、といった悪影響が現れます。
せっかくの手間暇が、味気ない結果に終わる原因はここにあります。

元肥の過剰が引き起こす生育後半の弊害

ツルボケの最大の原因は、土作り段階での元肥、特に窒素成分の過剰投入にあります。
元肥とは、植え付け時から土壌に混ぜ込んでおく基肥のこと。
ここで大量の肥料を与えると、生育後半まで影響を及ぼす弊害を引き起こします。

スイカの生育は、初期こそ緩やかですが、ツルが伸び出すと急速に栄養を吸収し始めます。
元肥が過剰な土壌では、この時期に株が大量の窒素を吸い上げ、勢いよくツルを展開させてしまいます。
問題は、実が付き始め、糖度を高めるべき生育後半になっても、土壌中に窒素が残存し続けていることです。

生育後半の株は、糖を果実へ蓄積させる「生殖生長」へと完全にシフトしている必要があります。
しかし、土壌から供給され続ける窒素のせいで、株は葉やツルを成長させる「栄養生長」のモードを引きずることになります。
これがツルボケの正体です。

ツルボケを起こした株の果実は、次のような状態に陥りやすくなります。

  • 肥大が遅れ、日持ちも悪くなる
  • 果肉の糖度が低く、水っぽい食感になる
  • ネットや果皮の色づきが悪くなる

つまり、元肥の過剰は単にツルが伸びるという現象にとどまらず、収穫後の品質そのものを根本から破壊するのです。
美味しいスイカを育てるためには、生育後半に土壌养分を意図的に枯渇させる「乾燥ストレス」を与える高度な制御が必要不可欠となります。

元肥を控えめに設定し、生育ステージに応じて追肥で調整する管理こそが、ツルボケを防ぎ、甘いスイカを収穫するための最も確実なアプローチなのです。

ツルボケを防ぐための元肥の過剰を防ぐ土作りの基本

赤玉土と腐葉土を混ぜ合わせて土作りをする手元

スイカの栽培において、ツルボケを防ぎ、甘みを最大限に引き出すための土作りは、単なる土の準備ではなく、緻密な栄養管理の設計と言えます。
元肥の過剰を防ぐことは、スイカの生理に合わせたストレスコントロールの第一歩です。

土壌環境は、スイカの根が呼吸する空間であり、養分と水分を保持するフィルターです。
このフィルターの機能を最適化しなければ、どれほど優れた品種を導入しても、ポテンシャルを発揮することはできません。

そこで求められるのが、元肥の量を意図的に抑制し、後からの追肥で細やかに栄養を調整できる土壌構造の構築です。
土作りの基本は、最初から満腹にするのではなく、必要な時に必要な分だけ与えられる余白を作ることにあります。

市販の培養土をベースにした配合レシピ

市販の培養土は、そのまま使うと元肥過多になりがちですが、適切にブレンドすることで優秀なベース土壌に変貌させることができます。
重要なのは、保肥性を下げて排水性を高めつつ、元肥の濃度を物理的に薄めることです。

基本の配合レシピとして推奨したいのは、以下のブレンドです。

  • 市販の培養土(野菜用):4割
  • 赤玉土(小粒)またはくん炭:3割
  • パーライトまたは籾殻燻炭:2割
  • 腐葉土またはピートモス:1割

この配合により、培養土に含まれる元肥を約6割に薄めることができます。
赤玉土やくん炭は、土壌の通気性を確保し、スイカの根が健全に呼吸するための隙間を作ります。
パーライトは排水性を劇的に向上させ、過湿を防ぐ効果があります。
腐葉土は微生物の活動を助け、土壌を団粒化して保水性を適度に維持します。

元肥の量を減らすための具体的な手順

配合レシピを実践する際、さらに確実に元肥過多を防ぐための手順を踏むことが大切です。
単に材料を混ぜるだけでなく、化学的なアプローチも加味します。

  1. まず、市販の培養土をバットに広げ、一度軽く乾燥させます。これにより、培養土内の過剰な水分を飛ばし、肥料濃度を均一化しやすくします
  2. 用意した赤玉土、パーライト、腐葉土を別の容器で入念に混合し、これらの無肥料資材を培養土に3割ほどの割合で加え、全体をムラなく撹拌します
  3. 混合後、土をビニール袋などに入れて1週間ほど寝かせます。これにより、培養土の元肥成分が他の資材になじみ、急激な肥料焼けを防ぐことができます

この手順を踏むことで、元肥の効き方が緩やかになり、スイカの生育初期から過剰な吸収を抑えることが可能です。

畑とプランターそれぞれの土作りの違い

土作りのアプローチは、畑(露地栽培)とプランター(容器栽培)で根本的に異なります。
畑の場合、土壌の広がりが無限大であり、スイカの根は広範囲に伸長して必要な養分を探し出します。

そのため、畑では元肥をより少なめに設定し、土壌全体を浅く耕起することで表土層の通気性を確保します。
元肥は畝の中心に深く混ぜ込むのではなく、表層から中層にかけて広く分散させることで、根が徐々に吸収できるように設計します。

一方、プランターの場合、根域が限定されるため、根の行き場が限られています。
ここでは排水性の確保が至上命題となります。
鉢底石を敷き、用土の粒を揃えることで、過湿を防ぐ構造を作ります。
プランターでは畑よりもさらに元肥を控えめにし、生育ステージに応じた液肥の追肥を主体とした栄養管理へとシフトすることが、ツルボケを防ぐ鍵となります。

元肥過多を防ぐための肥料バランスと追肥のコツ

スイカの株元に適量の追肥を与える手つき

スイカの栽培において、元肥を控えめにした土作りを行った後は、生育段階に応じた「追肥」の技術が極めて重要になります。
元肥過多を防ぐというのは、単に肥料を減らすことではありません。
むしろ、植物の生育状況を観察し、必要なタイミングで必要な量だけ栄養を補給するという、より高度で繊細な管理へとシフトすることを意味します。

肥料の三大要素である窒素、リン酸、カリのうち、スイカのツルボケを引き起こす主犯は「窒素」です。
したがって、追肥においては窒素の与えすぎを厳格に警戒しなければなりません。
一方で、実の肥大と糖度の向上には、カリとリン酸が不可欠です。
特にカリは水分の代謝と糖の転流を促進する役割を担っており、収穫前の甘みを決定づける重要な鍵となります。

追肥の際は、即効性の高い化成肥料を与えるのではなく、緩効性の肥料や、カリ成分を多めに配合された野菜用の追肥専用肥料を選ぶのが賢明です。
また、有機肥料を適度に取り入れることで、土壌微生物の働きを活発化させ、根張りを良くする効果も期待できます。

元肥を控えた際の追肥のタイミングと回数

元肥を控えた土作りを行った場合、スイカの生育は初期こそ緩やかですが、根がしっかりと張った後は急速に旺盛になります。
追肥は、このスイカの生育ステージと株の状態を観察して行います。

追肥のタイミングは、おおむね以下の目安が効果的です。

  • 1回目の追肥:本葉が5〜6枚に展開し、ツルが伸び始める「ツル伸長期」
  • 2回目の追肥:開花が終わり、受粉した雌花の基部が膨らみ始める「果実肥大初期」
  • 3回目の追肥:実が野球ボールほどの大きさに成長した「果実肥大中期」

1回目の追肥は、ツルを十分に展開させるための必要最低限の窒素を補給する重要なステップです。
しかし、与えすぎるとツルボケの引き金になるため、ごく少量を株元から少し離れた位置に施します。

2回目と3回目の追肥では、方針を大きく切り替えます。
実に糖分を蓄積させるフェーズに入るため、窒素を抑え、カリとリン酸の割合を高めた肥料を与えます。
これにより、葉やツルの成長を抑制しつつ、果実の肥大と糖度の上昇を強力に促すことができます。

なお、スイカの収穫予定日の2〜3週間前になったら、全ての追肥を完全に中止します。
ここからは土壌を乾燥気味に保ち、植物に「水と肥料が不足している」という適度なストレスを与えます。
このストレスこそが、スイカに糖度を蓄えさせる最大の原動力となるのです。
追肥のタイミングと回数を誤ると、最後の仕上げで味を台無しにしてしまうため、株の観察を怠らないようにしましょう。

肥料以外の要素:水やりと土壌環境の管理

ジョウロでスイカの株元に丁寧に水やりをする様子

スイカの栽培において、元肥の過剰を防ぎ、適切な追肥を行うことは極めて重要です。
しかし、肥料のバランスだけを整えても、美味しいスイカを収穫することはできません。
土壌の物理的・化学的環境を一定に保ち、根の呼吸を促す「水やり」や「土壌環境の管理」が、肥料管理と同等、あるいはそれ以上に収穫の品質を左右するからです。

スイカは非常に水分の多い果実ですが、その根は意外なほど過湿に弱いという特性を持っています。
土壌が水分で飽和状態になると、土壌の隙間にある空気が水分に置き換わり、根が酸素不足に陥ってしまいます。
これを「根の窒息」と呼びます。
根が窒息すると、水分や養分の吸収機能が著しく低下し、生理的な障害を引き起こす原因となります。

したがって、水やりの基本は「土壌の表面が乾いてからたっぷりと与える」ことです。
常に土を湿らせておくような管理は、スイカにとって最も避けるべき環境を作り出してしまいます。
特にプランター栽培の場合は、用土の量が限られているため乾きやすく、つい水を与えすぎる傾向がありますが、ここはグッと堪える自制心が必要です。

生育段階における水やりの要点は以下の通りです。

  • 苗の活着期:根張りを促すため、やや控えめに管理する
  • ツル伸長期:茎葉を展開するため、適切な水分を保つが、過湿に注意する
  • 果実肥大期:実が急速に膨らむため、水分をしっかり与える
  • 糖度上昇期:収穫の1〜2週間前からは意図的に水を切り、土壌を乾燥させる

スイカ栽培において最も高度で、かつ最も味を左右するのが、最後の「糖度上昇期の控水」です。
実が膨らみきった後、あえて水を与えないことで、スイカの株は危機を察知し、自分自身の体内に蓄積した水分を果実へと移行させます。
この時、水分と共に糖分が果実に集中することで、あの濃厚な甘みが生まれるのです。

次に土壌環境の管理についてです。
前述の通り、スイカの根は酸素を大量に消費します。
そのため、土壌表面が降雨や水やりで硬く締まってしまうと、通気性が失われ、根の呼吸が阻害されます。
これを防ぐために有効なのが「マルチング」です。

マルチングには、黒いポリフィルムを用いる方法と、ワラや籾殻などの有機物を敷き詰める方法があります。
ポリマルチは雑草の防除や地温の確保に絶大な効果を発揮しますが、土壌の通気性改善という点では、有機物マルチの方に軍配が上がります。
有機物は土壌表面を覆い、雨滴による土壌の表面固化を防ぐと同時に、微生物の活動を促すことで土壌を团粒化し、豊かな通気性と保水性を兼ね備えた環境を作り出してくれます。

また、スイカの根は非常に繊細であるため、土壌の「温度変化」にも敏感です。
地温が高すぎると根の生理機能が衰え、低すぎると養分吸収が止まります。
マルチングや適切な灌水管理は、この地温の急激な変動を緩和する役割も担っています。

畑(露地栽培)においては、降雨という制御不能な要素が絡みます。
特に梅雨時期の長雨は、スイカの過湿障害を引き起こす最大の要因です。
事前に排水溝を深く掘っておく、畝を高く盛るなど、物理的な排水対策を徹底することが不可欠です。

農学修士としての視点から言及すれば、植物の生育は「土壌環境」「水分管理」「肥料管理」の三本柱で成り立っています。
これらは独立した要素ではなく、相互に影響を及ぼし合う一つの系全体です。
どれが欠けても、バランスが崩れても、極上のスイカは育ちません。
丁寧な土作りと配慮された肥料管理をベースに、水と空気の流れをコントロールする。
この総合的なアプローチこそが、家庭菜園におけるスイカ栽培の醍醐味であり、奥深さと言えるでしょう。

スイカ栽培の土作りと元肥管理まとめ

収穫された甘いスイカと手入れされた畑の風景

ここまで、市販の培養土を活用しながらも、スイカの味を損なうツルボケを防ぎ、甘みを最大限に引き出すための土作りと肥料管理について解説してきました。
スイカ栽培の成功の鍵は、土作りの段階で元肥を過剰に与えないという基本方針に尽きるでしょう。

スイカは、一般的な野菜と比べて肥料や水分に対する反応が極めてシビアな作物です。
特に窒素成分が過剰になると、ツルや葉ばかりが茂る「ツルボケ」を引き起こし、実の肥大が遅れ、糖度の低い水っぽいスイカになってしまいます。
これを防ぐためには、スイカの生育特性を正しく理解し、土壌の物理的・化学的性質を適切にコントロールする必要があります。

市販の培養土は非常に便利ですが、そのまま使用すると元肥が過剰になりやすいという罠があります。
これを回避するためには、赤玉土やパーライトなどの無肥料資材をブレンドし、元肥の濃度を意図的に薄めることが重要です。
また、元肥を控えた分は、スイカの生育ステージに合わせた追肥で補います。
追肥は窒素を抑え、カリとリン酸を中心とした配合を選び、タイミングを見計らって与えることが求められます。

さらに、肥料管理だけでなく、水やりと土壌環境の管理も同じくらい重要です。
スイカの根は酸素を多く必要とし、過湿に非常に弱い性質を持っています。
したがって、土壌の排水性と通気性を確保することが不可欠です。

改めて、美味しいスイカを育てるための重要なポイントを整理しておきましょう。

  • 元肥は控えめに設定する:市販の培養土をそのまま使わず、他の資材で希釈して肥料濃度を下げる
  • 追肥で細やかに管理する:ツルの伸長期から果実の肥大期にかけて、生育段階に応じた成分と量を与える
  • 過湿を避け、通気性を確保する:水やりは土が乾いてからたっぷりとし、マルチングなどで土壌の物理環境を整える
  • 収穫前は意図的に水と肥料を絶つ:糖度を高めるための「控水」を行い、株に適度なストレスを与える

これらの要素はすべて連動しています。
土作り、肥料、水やり、どれ一つ欠けても、バランスが崩れても、目指すべき味には到達できません。
家庭菜園で育てる以上、必ずしも農家と同じような完璧な環境を作ることは難しいかもしれません。
しかし、基本的な原則を理解し、植物の状態を日々観察しながら適切に手を打てば、市販の培養土でも十分に甘くて美味しいスイカを収穫することができます。

スイカ栽培は、手間がかかり、繊細な管理が求められる分、収穫した時の喜びは格別です。
夏の強い日差しの下で、自らの手で育てたスイカを割り、あの赤く詰まった果肉を口にした瞬間の甘みは、苦労を忘れさせてくれるはずです。
ぜひ、この記事で紹介した土作りの基本を参考に、ご自身の畑やベランダで極上のスイカ作りに挑戦してみてください。

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