家庭菜園でつるなしインゲンを栽培していると、収穫目前になって莢(さや)にポツポツと吸汁痕が現れることがあります。
大切に育てた株が、ある日突然カメムシにやられてしまう——そんな悔しい経験をされた方も多いのではないでしょうか。
カメムシは飛来性が高く、繁殖力も強いため、一度発生すると被害が拡大しやすい厄介な害虫です。
特に注意したいのは、つるなしインゲンの草丈が低く葉が地表に近いことです。
地面から這い上がる個体に加え、成虫が飛来して莢を直接加害するケースが後を絶ちません。
莢が柔らかくなり始めたタイミングから本格的な被害が出始めるため、収穫直前であっても油断できないのが難しいところです。
さらに、加害された莢は商品性が大きく損なわれるため、予防と早期発見が何よりも重要になります。
そこで本記事では、防虫ネットの選び方や張り方の基本から、発生してしまったときに被害を最小限に抑える具体的な対処法までを、長年の栽培経験も交えながら整理しました。
化学農薬だけに頼らない、家庭菜園で実践しやすい内容に絞っていますので、今まさにカメムシ被害にお悩みの方はもちろん、来季の作付けに向けて準備しておきたい方にも、きっとお役立ていただけるはずです。
つるなしインゲンのカメムシ被害とは?基礎知識と発生原因

なぜカメムシがつるなしインゲンに集まるのか
カメムシがつるなしインゲンに引き寄せられる背景には、害虫側の生理的な理由と、作物側の構造的な理由の両方が関係しています。
まずカメムシの側から見てみると、彼らはマメ科植物の種子や莢に含まれるアミノ酸や糖分を主要な栄養源としています。
つるなしインゲンのように莢が柔らかく、内部の豆が肥大し始める時期は、まさにカメムシにとってごちそうのタイミングです。
さらにカメムシはフェロモンで仲間を呼ぶ性質があり、一匹を見つけた時点で近くにも複数個体が潜んでいる可能性を想定しておく必要があります。
一方、つるなしインゲン側の事情も無視できません。
つるありタイプと比べて草丈が低く、葉と莢が地表に近い位置に展開するため、成虫が這い上がってきやすい構造です。
また、葉が密になりやすい品種特性から、一度入り込まれると葉陰に潜みやすく、発見が遅れがちになります。
被害の実態と家庭菜園で深刻化しやすい理由
カメムシによる被害は、莢の表面に小さな黒い点として残ります。
これは口針を刺して内部の種子を吸汁した痕跡で、見た目だけでなく、食味や日持ちにも影響します。
ひどくなると莢自体が変形し、中の豆が十分に育たないこともあり、家庭菜園ではせっかくの収穫が台無しになるケースも少なくありません。
家庭菜園でこの被害が深刻化しやすいのには、いくつか理由があります。
- 栽培面積が小さく、周囲の雑草地や他のマメ科作物からの飛来源が近い
- 単一の作物を集中的に栽培するため、カメムシにとって恰好の標的になりやすい
- 日常の目が届きにくく、発生初期のサインを見落としがち
- 防虫ネットを後回しにしがちで、設置したときにはすでに侵入されていることが多い
結果として、「気づいたら莢の半分が被害に遭っていた」という事態を招きやすいのです。
次章以降では、こうした被害を未然に防ぐための具体的な対策を見ていきます。
カメムシの生態と発生時期|効果的な対策の前提

家庭菜園で問題になる主なカメムシの種類
家庭菜園のつるなしインゲンで被害をもたらすカメムシは、種類によって好む場所や加害のスタイルが少しずつ異なります。
代表的な種を把握しておくと、被害痕を見たときに原因の推測がしやすくなります。
まず、ホソヘリカメムシです。
マメ科を特に好む種で、体長は15mm前後、細長い体型と薄茶色の体色が特徴です。
つるなしインゲンに対しては最も警戒すべき種で、莢の柔らかい部分に口針を刺して種子を吸汁します。
次にイチモンジカメムシ。
緑色の体に背中に一文字状の白〜薄紅色のラインが入る、比較的大型のカメムシです。
ダイズやインゲンなどマメ科の若い莢を好み、発生量が多い年には家庭菜園でも一気に被害が広がることがあります。
そしてクサギカメムシ。
体長は約15〜18mmで、茶色いまだら模様が特徴です。
果樹から野菜まで広範囲の作物を加害する雑食性で、家庭菜園では他の作物との距離を問わず飛来してきます。
このほか、アオクサカメムシやマルカメムシが局所的に発生することもあります。
アオクサカメムシは緑色の大型種で、マメ科を含む多くの植物に集まります。
マルカメムシは5mm程度の小型種で、群れで加害するのが特徴です。
カメムシが活発になる時期と被害ピーク
カメムシの活動は、気温と密接に関係しています。
日本本土の場合、成虫は4月後半〜5月にかけて冬眠場所から目覚め、まず越冬世代が活動を始めます。
梅雨が明けて気温が上がる7月以降は個体数が急増し、8月から9月にかけて最も活動が盛んになります。
つるなしインゲンの栽培暦と照らし合わせると、開花から莢が肥大し始める6月下旬以降が特に警戒すべき時期です。
子実が育つタイミングと、カメムシの新世代成虫の活動ピークが重なるため、収穫期に入るころには最も多くの被害が出やすくなります。
また、カメムシは1年に複数世代を重ねる種が多く、秋口に生まれた新成虫がそのまま圃場周辺の草むらで越冬し、翌春に再び活動を始めます。
つまり、家庭菜園でカメムシ問題を繰り返さないためには、1年単位で考える視点が重要です。
発生時期を頭に入れておくことで、防虫ネットを張るタイミングや見回りの頻度を計画的に組み立てることができます。
防虫ネットの選び方|目合い・素材・サイズの目安

カメムシ対策に必要な目合いのポイント
防虫ネットの性能を左右する最も重要な要素が「目合い」です。
これはメッシュの開口径で表されることが多く、数字が小さいほど目が細かくなります。
カメムシの侵入を防ぐには、成虫の体幅を考慮して1mm以下の目合いが基本です。
意外に思われるかもしれませんが、ホソヘリカメムシの成虫は扁平な体をしており、頭部先端から腹部末端まで約15mmある一方、体側の隙間を縫いようにして狭い開口部を通過します。
実験的にも、2mmを超える目合いからは成虫の侵入を許してしまうことが報告されています。
ただし、目合いを細かくすればするほど、別の問題も出てきます。
- 通気性が落ちて高温障害や湿度過多のリスクが高まる
- 光線量が減り、葉の生育が遅れる場合がある
- 風を受けやすくなり、支柱の強度や張り方に工夫が必要になる
- ネット自体の重量が増し、取り扱いもやや重くなる
家庭菜園のつるなしインゲンであれば、0.8mm前後の目合いが最もバランスに優れます。
カメムシ対策としての実効性を確保しつつ、風通しと日射を適度に保つことができ、初めてネットを導入する方にも扱いやすい規格です。
ネット素材の特徴と耐久性の比較
防虫ネットに使われる素材は主にポリエチレンとポリエステルで、それぞれ特性が異なります。
園芸店で「防虫ネット」「サンサンネット」などの商品名で販売されているものの多くは、ポリエチレン製です。
ポリエチレン製ネットは、軽量で扱いやすく、価格も手ごろなことが特徴です。
一方、紫外線に弱く、野外で使い続けると2〜3年で糸が脆化してきます。
日当たりの良い場所ではさらに寿命が短くなるため、寒冷紗と同じ感覚で毎年もしくは隔年で張り替えるつもりでいたほうが安全です。
ポリエステル製ネットは、やや価格は上がりますが、UV耐久性に優れています。
厚みとコシがあるため、重力に張りやすく、強風時にもバタつきにくい利点があります。
長期的に使い回す予定があるなら、コストパフォーマンスはこちらに軍配が上がります。
糸の太さも選定ポイントです。
番手で表される数字が小さいほど糸が太く、ネットは丈夫になりますが重量も増えます。
一般的な家庭菜園用は約30〜40番程度が扱いやすい範囲です。
最後に幅と長さですが、つるなしインゲンの草丈が50〜60cm程度であることを踏まえると、幅1.5〜2m、長さは畝の長さに合わせて3〜10mを用意しておくとトンネル仕立てにちょうど収まります。
余裕を持って長めに購入し、不要分はカットするほうが、不足して買い足すよりも結局は楽になります。
防虫ネットの正しい張り方と設置時の注意点

隙間を作らない張り方のコツ
防虫ネットの性能を最も左右するのが、物理的な「隙間」の処理です。
どれだけ目合いが細かくても、1cmでも隙間があれば、そこからカメムシは侵入してしまいます。
家庭菜園で陥りがちなのは、上部や側面は丁寧に張れていても、裾や接続部に油断が出るパターンです。
まず裾の処理が基本中の基本です。
ネットの端を地面に5〜10cmほど垂らし、土をかぶせるか、U字ピン、レンガ、土嚢(どのう)で押さえます。
畝の両端も同様に固定し、収穫時に開閉する出入口以外は完全に閉じてしまうのが理想です。
次に出入口の開閉方法です。
日常的に出入りする箇所は、ジッパー付きネットに交換するか、ホッチキスや洗濯バサミで簡易的に留める形にします。
マグネット式の留め具も市販されており、頻繁に開閉する方には便利です。
そしてポールとの接合部。
トンネル支柱の頂点をネットで覆うとき、ネットの折り目から隙間が生じやすいので、上部にも1〜2か所パッカーや紐で固定を追加します。
設置後は必ず内部に入って外光を遮断し、隙間から光線が入っていないかを確認する習慣をつけてください。
支柱立てとトンネル仕立ての組み立て手順
支柱立ての工程は、(1) 支柱の準備、(2) 差し込み、(3) ネット張り、(4) 固定の順に進めるとスムーズです。
事前に道具を揃えておくと、当日の作業が格段に楽になります。
支柱には、家庭菜園では直径8〜11mm程度の鋼管パイプやガラス繊維製の支柱が定番です。
長さはおおむね180〜210cmのものが、つるなしインゲンのトンネルとして扱いやすい寸法になります。
手順を追って説明します。
- 畝の整地:ネットを張る前に、畝表面の石やごみを取り除いて平らにしておく。支柱が安定し、ネットの裾も地面に密着しやすくなります
- 支柱の差し込み:畝の両端と中央を決め、そこから50〜80cm間隔でアーチ状に支柱を差し込む。挿す深さは15〜20cmが目安
- ネットの仮掛け:用意した防虫ネットを支柱の上から全体にふんわりとかけ、たるみの位置を確認する
- 裾の固定:両端と側面をU字ピンや重りで固定し、風で煽られないように地面と密着させる
- 上部の固定:トンネル頂点でネットがパタつかないよう、支柱とネットをパッカーや紐で数か所とめる
特に最初の支柱位置は畝の長辺に対して垂直に正確に立てること。
これがぶれると、後工程のネット張りがすべて歪(ゆが)みます。
風雨対策とネット寿命を延ばす管理法
防虫ネットはそれ自体が風を受けるため、強風時には骨組みごと倒壊するリスクがあります。
設置段階である程度の予防策を施しておくことが、長く使い続けるための鍵になります。
風の対策としては、支柱の本数を増やす、頂部に横渡し支柱を入れて強度を高める、ネットの張り具合をややきつめに調整するといった方法が有効です。
畝の方向を季節風の主方向と平行にすると、風圧を受けにくくなります。
雨の対策としては、ネット表面に溜まった水滴が局部的に重みでネットを押し下げないよう、雨上がりや散水後に軽く払い落とす習慣をつけると安心です。
また、防虫ネットは撥水加工のない素材が多いため、長期間濡れたままにすると糸が早く傷む原因になります。
そして保管と補修です。
シーズン終了後はネットを回収し、中性洗剤で軽く洗ってから日陰で乾燥させ、湿気の少ない場所で保管します。
破れが見つかった場合は、防虫ネット用の補修テープや手芸用の糸で縫うなどして早めに対処します。
小さな穴を放置すると、そこからカメムシが侵入するリスクが一気に高まるためです。
最後に、栽培期間中に数週間に一度は見回りをし、ネット全体の張りと固定具の緩みを点検する習慣をつけておくと、防虫効果を長く維持できます。
防虫ネットでも防げないカメムシ侵入への備え

防虫ネットは、つるなしインゲンをカメムシから守るうえで最も頼れる手段の一つです。
しかし、どれだけ丁寧に張ったネットでも、100%の侵入防止を保証するものではありません。
むしろ「ネットを張ったから安心」という油断が、被害発見の遅れにつながりやすい点には十分な注意が必要です。
カメムシの侵入経路は、私たちが想像する以上に多様です。
わずかな破れ、裾の浮き上がり、収穫のたびに開閉する出入口など、日常のどこかで生じた隙間が侵入の糸口になります。
大切なのは、ネットを過信せず、定期的な見回りで早期発見の仕組みを併用することです。
次の項では、その具体的な見回りと、盲点になりやすい侵入経路について詳しく見ていきます。
ネット内への侵入を早期発見する見回り方法
侵入を前提とした上で重要なのは、「見つけたらすぐ対処できる状態」に保つことです。
カメムシは1匹でも見つかれば、周囲に複数潜んでいる可能性を疑うべき害虫です。
発見から対処までのスピードが、被害の拡大を左右します。
家庭菜園で取り入れやすい見回り方法をまとめます。
- 朝の涼しい時間帯に内部を確認する:カメムシは朝は動きが鈍く、葉の上でそのまま見つかることが多い。気温が上がる前の10時までにチェックを済ませるのが効率的です
- 葉の裏を中心に目で追う:成虫は葉の裏側に潜む習性があり、莢だけでなく葉裏まで一枚ずつ丁寧に見ます
- 黒い粒状の糞を探す:カメムシは吸汁中に黒い糞を落とすため、これがあれば侵入済みのサイン
- ネット越しに白い布を敷いて軽く揺する:下に落ちた個体を見つけやすく、簡易的なモニタリングになります
特におすすめしたいのは、見回りをルーティン化することです。
毎日あるいは1日おきに同じ時刻・同じ経路でネットを開閉し、中の状態を確認します。
慣れてくると異常箇所が一目でわかるようになり、初期の被害でも見逃しにくくなります。
見落としがちな侵入経路の盲点3つ
防虫ネットを設置したにもかかわらずカメムシ被害が出る場合、ほぼ例外なく以下のいずれかが原因になっています。
どれか一つでも思い当たる節があれば、早急に見直すことをおすすめします。
盲点その1:収穫や見回りで開閉する出入口の閉め忘れ。
最も多いのがこのパターンです。
出入口を閉じる手間を惜しんだ拍子に、昼の間に何匹も入り込まれてしまうことがあります。
ジッパー付きのネットや、マグネット式の留め具を導入し、開閉後に必ず閉じたことを確認する動作を習慣化するのが効果的です。
盲点その2:ネット裾の浮き上がりと地面の段差。
畝の表面は時間とともに沈下し、端の支柱が浮いてしまうことがあります。
ネットの裾が地面から浮いた箇所があれば、そこがまさに入り口になります。
1週間に一度、ネットの裾と地面の密着状態を見直すようにしてください。
盲点その3:ネットの破れや接続部のゆるみ。
最初は1cmにも満たない小さな穴でも、風や接触で徐々に広がり、そこから成虫が入り込みます。
また、2枚以上のネットを繋いだ継ぎ目も、見落としやすい弱点です。
破れを見つけたらその場で補修し、接続部には重ね代を多めに確保します。
さらに、ネットのすぐ外で草花が繁茂していると、そこから次々と飛来してくるリスクが高まります。
周囲1m程度は除草しておくと、ネット自体の侵入防止効果が一層安定します。
カメムシ発生時の効果的な対処法とおすすめ散布剤

どれだけ防虫ネットを丁寧に運用していても、侵入を許してしまうことはあります。
そうした場面で被害を最小限に抑えるには、物理的な駆除と、必要に応じた散布剤の併用が現実的です。
ただし、化学農薬だけに頼ると人体や周囲の環境への影響が大きくなるため、優先順位を持って段階的に対処していくのが理想です。
手取り・粘着トラップなど物理的駆除の方法
最初に取り組むべきは、人手による捕殺(手取り)です。
防虫ネット内の個体数が少ない初期段階ほど効果が高く、化学的な手段を使わずに済ませられる利点があります。
具体的な手順は次の通りです。
- 早朝にピンセットや手袋をした手で捕獲する:カメムシは低温時に動きが鈍いため、朝の涼しい時間帯が捕獲のチャンスです。軍手を使うと臭腺からの分泌液が手について不快なので、できればビニール手袋や薄手のゴム手袋を着用します
- 捕獲した個体は石鹸水や凍結で処分する:直接踏み潰すと強い臭いが広がるため、バケツの石鹸水に浸けるか、ビニール袋に入れて冷凍すると衛生的です
- 粘着トラップを補助的に設置する:園芸用の黄色粘着シートを畝の両端や支柱の外側に吊るすと、飛来・歩行してくる個体をある程度捕獲できます。ただし、莢に直接にかかる位置に設置すると受粉や光合成に影響するため、設置場所は慎重に選んでください
- 防虫ネット内での振動モニタリング:白い布を敷いた上で葉や莢を軽く揺すり、落下した個体を確認する方法は、見落としがちな存在を可視化するのに有効です
発生初期のうちに手取りで個体数を抑え込めれば、散布剤の出番を減らすことにもつながります。
家庭菜園で使いやすい散布剤の選び方
物理的な駆除だけでは対処しきれない場合、家庭菜園用として販売されている散布剤の使用を検討します。
選ぶ際は、「カメムシ類」への登録があること、収穫前日数が短いこと、小型包装で残薬が出にくいことの3点を基準にすると失敗しにくいです。
具体的には、以下のような系統がよく使われています。
- 天然ピレスロイド系(除虫菊エキス):人毒性が低く、収穫前日数が0〜1日と短い。家庭菜園で使いやすく、補助的な選択肢として導入しやすい
- ネオニコチノイド系や合成ピレスロイド系の家庭園芸向け製品:カメムシへの効果が高く、持続期間も長め。ただしミツバチなどへの影響が出るため、開花期の使用は避けるか、朝夕の活動が穏やかな時間帯に限定する
- 有機栽培向け脂肪酸塩やニーム(azadirachtin)系:化学合成農薬に抵抗のある方にも取り入れやすく、効果は比較的穏やかだが発生初期なら一定の抑制効果が期待できる
農薬は「同じ系統を連続して使わない」ローテーション散布が基本です。
同一系統の連用は抵抗性を高め、数年後の効きを悪くする原因になります。
散布から収穫までの安全な期間と注意点
散布剤を使用する際は、食品衛生上の「収穫前日数」を必ず守ることが最も重要です。
製品ラベルには「収穫〇日前まで」と記載があり、これを超えた翌日以降の収穫でなければ、安全性が担保されません。
家庭菜園であっても、市販の農薬を扱う以上は食品として人の口に入る以上、この基準は厳格に守るべきものです。
散布時の基本動作も押さえましょう。
- マスク・手袋・長袖など最低限の保護具を着用する:原液が皮膚につかないよう、軍手ではなくゴム手袋が望ましいです
- 風の強い日は避ける:薬剤が自分にかかってしまうリスクを避けるため、無風〜微風の条件で散布します
- 朝夕の涼しい時間帯を選ぶ:カメムシは朝晩に葉上に移動しやすく、また高温時の散布は薬害のリスクを高めます
- 散布記録を残す:日付、薬剤名、希釈倍率、対象害虫、収穫予定日を簡単なノートに書き残しておくと、後から安全日数の確認が容易です
散布から収穫までの日数は、最も近い将来の収穫予定日から逆算して決めるのが安全です。
翌日収穫予定の莢があれば、その手前の散布は控えるなど、計画的な運用を心がけてください。
被害を最小限にする収穫タイミングと事後処理

カメムシの被害が出てしまったとき、被害の拡大を抑えるカギは「早期収穫」と「その後の圃場リセット」の二点に集約されます。
どちらも、家庭菜園でカメムシ問題を翌年以降にも持ち越さないために重要な作業です。
被害程度の軽い莢を見分けるポイント
吸汁痕のある莢でも、程度によっては十分食用にできます。
家庭菜園では「被害があれば即廃棄」とする方もいますが、それではせっかくの収量が無駄になりかねません。
被害の軽い莢を見分けて、適切に利用していく視点が大切です。
見分け方の目安をまとめます。
- 黒い点が直径1mm未満で1〜2か所だけ:吸汁痕がこの程度なら、莢の見た目と食味に大きな影響はなく、通常の料理に利用できます
- 莢の形状がほぼ左右対称:吸汁によって変形した莢は曲がりや膨らみの偏りが生じます。対称性が保たれている莢は、内部の豆も比較的健全なことが多いです
- 表面のカサつきや変色がない:吸汁痕の周囲が褐変していたり、莢全体がしなびた印象の場合は、内部で腐敗が進んでいる可能性があります
逆に、明らかに変形している、表面に複数の大きな黒い斑点がある、指で押すと柔らかさや凹みがあるといった莢は、傷みが進んでいるため思い切って摘み取って処分するのが安全です。
もう一つの有効な手段として、若採り(早めの収穫)があります。
莢が若いうちはカメムシも刺しにくいことに加え、多少の被害が出ても莢自体がやわらかいため被害が目立ちにくく、家庭菜園では結果的に収量ロスを減らしやすい戦略です。
発生源を減らす収穫後の圃場リセット
つるなしインゲンの栽培が終わったら、次の作付や翌年に向けて圃場を整理します。
ここで手を抜くと、圃場周辺のカメムシ越冬個体数を増やしてしまい、翌シーズンの発生源になってしまいます。
リセットの主な手順は次の通りです。
- 株の残渣(ざんさ)を抜き取り、畑の外に出す:抜き取った株は堆肥化するか、自治体のルールに従って処分します。圃場内に放置するとカメムシや他の害虫の越冬場所になるため、必ず持ち出します
- 土壌を浅く耕起し、越冬個体を露出させる:秋口に耕すことで、地中に潜ったカメムシや卵を寒気や乾燥にさらします。冬期に入る前に一度天地返しをしておくと効果的です
- 周辺の雑草を除草する:特にマメ科の野生種(カラスノエンドウ、ヤハズソウなど)はカメムシの重要な越冬宿主になります。畝の周囲1〜2m程度はきれいに保ちます
- 夏季に太陽熱消毒を行う(翌春の準備として):透明マルチで2〜4週間覆い、地温を50℃以上に上げて土壌中の害虫密度を下げる手法も、防虫ネットと組み合わせると再発防止効果がさらに高まります
同じ場所で連作しないことも、発生源抑制の基本です。
つるなしインゲンはマメ科なので、続けて栽培すると土壌のバランスが崩れるだけでなく、害虫の温存にもつながります。
1〜2年は別の科の作物(ナス科やウリ科の野菜)を挟む輪作を意識してください。
これらのリセット作業を通じて、圃場の「清潔さ」を保つことが、翌年のカメムシ対策の最も確実な土台となります。
つるなしインゲンをカメムシから守るための総まとめ

ここまで、つるなしインゲンの栽培におけるカメムシ対策の基礎から、防虫ネットの選び方・張り方、発生時の対処法、収穫後の圃場リセットまでを順に整理してきました。
最後に、本記事でお伝えしたい要点を改めて集約します。
カメムシ対策の核心は、「入れない」「見つける」「増やさない」という三つの視点に整理できます。
防虫ネットによる物理的な遮断は「入れない」工程の主役であり、目合い0.8mm前後のネットを隙間なく張ることが最大の予防策になります。
しかし、100%の侵入防止は現実的ではないため、見回りによる早期発見、つまり「見つける」工程が被害拡大を抑えるカギを握ります。
そして、発生源の除去と圃場リセットという「増やさない」工程が、翌年以降のカメムシ圧力を下げる長期的な土台となります。
この三つの視点を、ご自身の家庭菜園の規模や作業時間に合わせて優先順位をつけて運用することが大切です。
すべてを完璧にこなすのは現実的ではありませんが、優先順位を意識するだけで成果は大きく変わります。
一つひとつの対策は地味に見えても、組み合わせて継続することで、翌年には目に見える効果が現れてくるはずです。
実際に家庭菜園で優先したいアクションをまとめます。
- 最優先:防虫ネットを0.8mm前後の目合いで設置し、裾まで隙間なく固定する:コストと効果のバランスが最も優れている
- 次点:1日1回、朝の涼しい時間に葉裏まで見回る:異常の早期発見は被害拡大を劇的に抑える
- その次:発生初期は手取りで捕殺し、状況に応じて散布剤を使う:化学農薬への依存を最小限に抑える
- シーズン終了後:株の残渣を持ち出し、土壌を浅く耕起する:翌年の発生源を断つ基本動作
特に強調しておきたいのは、カメムシ対策は一年単位で考えるべき問題だということです。
シーズン中の防除だけでなく、圃場リセットと輪作まで含めて年間サイクルで運用することで、翌年には「前より明らかにカメムシが減った」と実感できるレベルまで持っていくことができます。
完璧を目指すあまり神経質になる必要はありませんが、「入れない」「見つける」「増やさない」の三本柱を軸に、自分の栽培スタイルに合った無理のない範囲で続けていくこと。
それが、つるなしインゲンの収穫を長く楽しむための、最も確実なカメムシとの付き合い方だと考えています。


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